アメリカで在宅起業家(homepreneur ホームプレナー)が増えているという。アメリカのビジネスの半数以上は自宅で営まれている。2009年現在、ホームプレナーは推定660万人で、自分を含めて平均2人を雇用している。つまり、在宅起業家は1300万人の雇用を生み出している。ベンチャーキャピタルが出資する企業の雇用数は2008年で1210万人だから、VC に匹敵する雇用市場ということになる。そしてこの値は、民間企業の雇用者のうち10人に1人はホームプレナーによる雇用であることを意味する。
個人事業主という枠内で見ると、売上高と純利益はオフィスを構える事業者より劣るものの、売上高純利益率ではオフィス無しの事業者の方が優れている。これはもちろん、オフィスの固定費がかからないためだ。オフィスを構える個人事業主の黒字率は21%であるのに対して、ホームプレナーは36%。そしてオフィスなしの起業はコスト負担を軽くするだけでなく、働く場所の自由度も上げる。
佐々木俊尚氏はいう。「ノマド時代を支えるのは次の3つ。無線ブロードバンド。クラウド。そしてスタバやタリーズのようなサードプレイス。サードプレイスというのはオフィスでも自宅でもない3番目の場所で、じっくり仕事ができる環境のこと。」ノマドというのは遊牧民のことだ。遊牧民のように、都会の草原を移動しながら仕事をする。
インターネット上のどこからでもアクセスできるクラウド、そのクラウドにどこからでも到達できるようにする無線ブロードバンド、そして自分の物理的な居場所があればそれでいい。自宅でも公園でもカフェでも図書館でも、あるいはたまには顧客のオフィスでも。まだやったことはないが、天気のいい日に公園の木陰で木のテーブルの上で仕事したら気持ちいいだろう。スタバやタリーズはよく使う。隣の人の会話が気になることはほとんどない。バッテリーの大容量化、PCの省電力化によって電源の問題は徐々に解決しつつある。PC を持ち歩かなくても、iPhone とキングジムの Pomera でなんとかなることも多い。
ところで、夢を思い描いて舞い上がるだけではいけない。逆のデータもあることを知って現実を認識しておきたい。アメリカの有雇用企業数は568万社、個人事業主(independent contractor)は1034万人。日本の法人数は285万社(2006年国税庁調べ)、個人事業主いわゆる自営業者は607万人(2008年)。このうち自営業者については、日米ともに年々減っている。日本ではこの20年で300万人減少した。アメリカではクリントン政権でスモールビジネスを奨励し、日本でも2006年の新会社法で1円起業が可能になった。個人事業主よりも法人化を選ぶ人が増えているために個人事業主が減少しているのだと考えたいものだが実態は異なる。ここ10年で法人数は246万から259万へ、5%増えているだけだ。とくに2000年以降は横ばいで、毎年の伸び率が1%を切る。町の商店も次々とシャッターを下ろす中、激減した個人事業主はどこへ行ってしまったのだろうか?




